リウマチ・膠原病を専門としている内科医です。この分野は専門医が少なくて、全国に1000人くらいしかいません。

私自身、14歳のときに自己免疫難病を発症しました。地元の和歌山には専門の医師がおらず、中々診断がつきませんでした。診断がついた後も、専門医がいないということで、遠方の病院まで通っていたという経験があります。暮らす場所によって受けられる医療が違う。

そんな不条理を経験しました。

医師となった私は専門医となり、地元に貢献しようかと考えておりました。しかし、14歳のあのときに感じた不条理がいつも私の中にあったので、地域医療の偏在問題を解決するための方法を模索し始めたのです。

そこで、専門医の知見や経験という社会資源をうまくシェアすることで、全国に送り届けることに取り組み始めました。それがうまくできれば、都市部と地方の医療格差を埋め、患者さんに恩恵をもたらすことになるのではないか、と頑張っているところです。

NIPTについては、医師の中にも、まだ知らない人がたくさんいます。本来、知っているべきことが十分に知られていないという点では、医学生が医師になったときに知っておくべき知識や情報が、実際は行き届いていないということではないでしょうか?

患者さん本位ではなく、他の問題によってNIPTが広まらないでいるのだとしたら、それはよくないことだと思います。

NIPTは、胎児の染色体異常に不安を抱えている妊婦たちを、不安から救い出すためのツールです。国際的に見れば、NIPTに国が補助金を出している国もありますし、妊婦の知る権利を尊重するのは当たり前であると、考えられるようになってきています。先進国の中では日本だけが特殊で、NIPTを受けている妊婦さんは約1%に過ぎません。ほとんどの人が受けていないのです。

特に問題なのが、そもそもNIPTのことをほとんどの人が知らないという事実です。NIPTという検査があることをみんなが知っていて、「私は受けなくていい」と決めたのなら、それでいいでしょう。しかし、実際にはほとんどの人がNIPTの存在を知りません。そのため、子どもを出産した後になって、「こんな検査があったのなら、ぜひ受けたかった」という声が聞かれたりします。こういう声があまりにも多いのが問題です。

私は、個人的には、「NIPT推進!」という旗を振るつもりはありません。しかし、NIPTという検査があることを、誰もが知り得る状況にしておくことは大切だと考えています。

 当院ではNIPTを実施していますが、胎児の染色体異常を心配して相談にきた人には、「どうして心配なのですか」と聞くようにしています。そうすると、身近な人がダウン症の子を産んだとか、染色体異常による病気についてテレビで見たとか、多くの場合何らかの情報が元になった不安です。

誰もがその人なりの物語を持ち、悩みに向き合っています。私たちはエビデンスに基づいて医療を届けようとしますが、それがその人にとってベストの医療だとは限りません。その人の人生の物語に寄り添い、その人が必要としている医療を提供することが大切だと考えています。そんなナラティブメディスンを意識して、診療に当たっています。 NIPTに関して相談に来られる多くの方が、不安を抱え、情報を求めています。私たち医師が寄り添えるところはたくさんあると思っています。

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